11月3日、全生園でのちんどん本番。
30人という大所帯となり、まとめられるか不安があったが、10月に井の頭公園で何度か練習を重ね、感動的なイベントとなった。
ちんどんと言っても、韓国の楽器や曲を演奏するので、日本のいわゆる”ちんどん屋”とはちょっと違う。ちんどん屋らしいちんどんにもあこがれるが、何せ大所帯。ピアニカやマラカスなど、手持ちの楽器をかき集めるので、てんでバラバラのおもしろいサウンドになる。
全生園というハンセン病患者・快復者の人たちが住む療養所には、在日韓国人の人もけっこういて、以前僕が韓国に行ったり、チャンゴ(韓国太鼓)を少しだけやったこともあって、韓国の曲をすることになった。
韓国楽器はチャンゴ3台に、ケンガリ(高い音のカネ)、チン(銅鑼っぽいの)、テピョンソ(チャルメラみたいな音の木管)。ほかにピアニカ、アコーディオン、チャンチキ、スネア、などなど。
踊りも、唄も、お囃子もある。さすが、30人の個性と迫力があった。
練り歩きが始まると、普段、入れないような、重症患者のいる病棟からも呼ばれ、普段は静かであろう病棟にも太鼓の音が響き渡る。
後遺症などで顔や手足が変形し、体中に包帯を巻いている人、目の見えない人、多くの人がベッドの上や車いすに乗って、一緒に手をたたいたりしてくれる。岡山の愛生園でも、昨年の全生園でも、もう何度も同じような光景に遭遇しているが、いつも人間の生きる力強さに圧倒される。同じ時に、同じ空間で、同じ音を楽しみ、たった一瞬の、数十秒かそこらの共有でしかないが、突然現れた僕らと、そこにいた人たちとの間で、何かをうち解けあえた気にさえさせてくれる。自然と涙があふれてきたが、太鼓をたたく手をとめずに歩き続けた。
ちんどんを終えると、いつも数日、放心状態が続く。最近、ようやくもとの生活に戻ってきた。そしてまた忘れた頃に、ちんどんの季節がやってくるはずだ。
2005.11.3